『入門 起業の科学』田所雅之著

コンサルやベンチャーキャピタルで勤務経験のある著者が

スタートアップについて記した『起業の科学』の入門編。

起業するにあたって、「スモールビジネス」と「スタートアップ」は異なる。

スモールビジネスはすでにある事業を小さく始めるもので初めからある程度収入が見込める。

一方、スタートアップは道無き道を自ら切り開き、初めは赤字だが、その後、爆発的に

売上を上げるようになって、短期間で巨額の利益を上げるビジネスモデルのこと。

本書は後者について書いた本である。

スタートアップではまず、アイデアの磨き込みが必要になる。

そこで、最初にビジネスモデルの原型ともいうべき最善の仮説を立てる。ここで、顧客の

どのような課題の解決につながるのかを明らかにする。

市場を注意深く観察すれば、ユーザーが既存の製品に不満を持ちつつも、

仕方なく使っている領域がある。

そして、そのビジネスモデルを「なぜあなたが、それをするのか?”Why you?”」について

答えられるような強い思いを持つことも重要になる。

ビジネスモデルの検証をする際に、「PEST分析」をすることが有効である(Politics,

Economy, Society, Technology)。最近の技術動向を探るには米調査会社ガートナーが

毎年発表する「ハイプ・サイクル」を見ることがお勧めである。

効率よくアイデアのヒントを集めるにはYCが開催するデモデーがお勧めである。毎年、

最先端のスタートアップが世界から集う舞台である。

スタートアップでは同じ起業家とフェイスブックで人と繋がることが仕事ではなくて、

顧客や一緒に仕事する仲間といった人脈を広げることが重要になる。

また、スタートアップにとって成功するための正攻法は「市場規模が小さく成長性の高い

領域で戦うこと」である。

ビジネスモデル構築では、人間の泥臭い部分、コンピューターでは予測が難しそうな部分を

起業家が理解しようと努めない限り、データとにらめっこしたところで答えは見えてこない。

『じんかん』今村翔吾著

私は歴史小説が好きなのかもしれない。

この小説も戦国時代が舞台の歴史小説

主人公は松永久秀。主家を殺し、天下の将軍を殺し、東大寺の大仏殿を焼き尽くすという

三つの大悪を働いた男として信長に言われた男の一生を描いた物語。

出自が不明と言われているが、この小説の中では

遺児として追い剥ぎをしていた所から話が始まる。

ある兵法者を追い剥ぎしようとして逆に追い込められ、

弟と仲間と運よく逃げた寺で平和に暮らすが、

追い剥ぎ時代の仲間である多聞丸という男が語っていた

大名になるという夢を自分も追い求めて

寺に出資しているある人物に会おうとして、弟と共に出かけることにする。

そこで堺の商人武野新五郎、さらには三好元長という有力者の元に使えることになる。

途中、柳生家で後の部下となる瓦林総次郎や海老名権六、四手井源八らと出会い、

仲間となって、徐々に地位を上げていく。

しかし、戦国の世を生き抜く九兵衛(久秀)は元長に影響されて、

民により世の中を治め、この世から武士を無くす、というのが自分の夢だと思うようになる。

やがて、三好家の重臣となり、お家騒動などに巻き込まれていく。

なぜ東大寺を焼き討ちしたかについてはもっと描いても良かったのではと思う。

それでも若かりし頃の久秀と従来描かれていた悪党である久秀像を違う角度から

描いている点で新しいと言えるのかもしれない。

『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官』

2009年公開のアメリカの映画。

"Immigration and Customs Enforcement"

略してICE。アメリカの移民・関税執行局。

ハリソン・フォードが主人公でその捜査官を演じている。

中南米からの移民、中東からの移民、アジアからの移民、オーストラリアからの移民など

様々な国・地域からの移民が毎年数多く入ってきているアメリカ。

元々が移民によって成り立っているアメリカ合衆国は移民の受け入れに寛容なのかと

思いきや、事実はそうでもない。もちろん、不法移民なども問題であるのだが、

人道的な観点から言うと、一概にそれだけで移民排斥してしまっていいのかと言う

問題もある。

この映画はそのような重いテーマを扱っている。

様々な移民の視点から映画は作られているのだが、

そのいずれも何かしらの問題を抱えている。

アメリカ人がこの映画を作っていると言う点が多少の救いになっているだろうか。

 

『鑑定士と顔のない依頼人』

2013年公開のイタリアのサスペンス映画。

主人公は歳をとった鑑定士の男。オークションの司会もやっている。

ある時、若い女性の依頼人から家の物の鑑定をしてほしいと頼まれる。

鑑定士が依頼人の家に行くと、依頼人は隠れて正体を表そうとしない。

鑑定士はその顔が気になって、こっそりと依頼人の家に潜んでついに顔を見る。

すると若くて美しい女性であった。

鑑定士はすっかり虜になってしまい、仲良くなって、ついには結婚までしてしまう。

しかし、結婚の直後、鑑定士が家に帰ると、それまで大事に隠し部屋に飾っておいた

女性の肖像画が全てなくなっていた。

依頼人やその周辺にいた人たちが皆でグルになって、その鑑定士を嵌めたのだった。

鑑定士はすっかり意気消沈してしまい、一人、レストランで食事をするところで終わる。

鑑定士がかわいそうな結末ではあったが、途中のセリフで、

「贋作の中のどこかに、贋作師のサインやクセなど本物が込められている」

というセリフがあり、騙した依頼人の女性が鑑定士と恋に落ちていた風に装っていた中にも

どこかに本当の愛があったのでは、と思わせるところがあったのだ。

そうだとしても、何とも切ない終わり方だった。

 

ソラノイロ@東京駅

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特製ベジソバ

東京駅のラーメンストリートにあるラーメン屋

麹町店がミシュランガイドに掲載されているというのと野菜ラーメンが

珍しいので食べに行ってみた。

特製ベジソバは写真の通り、キャベツとサツマイモとミニトマト

ブロッコリーとレンコンとニンジンと味玉が野菜スープと

野菜が練りこまれたオレンジ色の麺の上に載せられている。

味は薄味だが、野菜の出汁がスープに出ていてとにかくヘルシーな感じ。

こってりが好きな自分としては少し物足りないかな。

『1分で話せ』伊藤羊一著

ヤフー・アカデミアという企業内大学の学長である著者が

孫正義の前でプレゼンを褒められるまでに至る自分のスキルなどをまとめた著書。

人に伝える際に、いくらロジカルでもダラダラと話していては伝わらない。

人は相手の話を80%は聞いていないからだ。

話は「結論ー根拠(3つ)ー例えば」のピラミッドで構成する。

プレゼンの場合は、これにキャッチーなキーワードをプラスする。

「誰に、何を、どうしてもらいたい」を意識することから始まる。

上司に言われたから報告するだけでは相手には伝わらないというのは耳が痛い。

考えが頭の中をぐるぐる回っているだけの悩むという状態から、結論を出す、

つまり考えることを習慣づけることが重要であるというのも耳が痛い。

「例えば」の話をして相手のイメージを引き出すには、本人の記憶にある

イメージを引き出す、「想像してみてください」などのような言い方をする。

そして、プレゼンには練習が必ず必要になることも忘れてはならない。

『盤上の向日葵』柚月裕子著

将棋の駒が置かれた白骨死体。

その駒は名工が作った600万円もする由緒ある高級駒だった。

 

あるタイトル戦に挑戦する棋士がどのような変遷を経て今に至っているかを

描いているのだが、特に幼少の頃に父親にネグレクトされながらも

ふとしたことがきっかけで知り合うことになった元教師に可愛がられながら、

一緒に将棋を指していく様子を描いた話が非常に愛がこもっていて良かった。

その後、真剣師と呼ばれる賭け将棋を生業にする人と行動を共にするのだが、

青森の浅虫温泉や岩手の遠野など地方で賭け将棋をする様子も非常に興味が持てた。

小説に出てくる真剣師は現実には今はもういないらしい。

解説を書いた羽生さんが一度だけ子供の頃真剣師と将棋を指したエピソードを語っており、

本編ではないのだが、それも実に面白かった。