『人間』又吉直樹著

著者の小説は全て読んできたが、文章表現が凝っているので、

今回も迷うことなく購入した。

かなり変わり者が主人公(その他登場人物も含め)だな、という感じがして、

読んでいて感情移入が中々できなかったが、

著者の文章表現の盛り上げ方が上手くて、

自然とのめり込んで読んでしまった。

途中、太宰治の『人間失格』が何度か出てきて、

著者はこの「人間失格」の「人間」をやるのが不器用な登場人物たちを指して、

タイトルを『人間』としたのだろう。

登場人物は複数人いて、いずれもどこかズレてたり、

筋が通ってなかったりするのだが、著者は自分をこれらの登場人物たちに

投影させているのではないだろうか。

最後に「僕が母の網膜の生まれ変わりなら、僕が見るということは

母が見ているということになる。」という表現が非常に感動した。