『盤上の向日葵』柚月裕子著

将棋の駒が置かれた白骨死体。

その駒は名工が作った600万円もする由緒ある高級駒だった。

 

あるタイトル戦に挑戦する棋士がどのような変遷を経て今に至っているかを

描いているのだが、特に幼少の頃に父親にネグレクトされながらも

ふとしたことがきっかけで知り合うことになった元教師に可愛がられながら、

一緒に将棋を指していく様子を描いた話が非常に愛がこもっていて良かった。

その後、真剣師と呼ばれる賭け将棋を生業にする人と行動を共にするのだが、

青森の浅虫温泉や岩手の遠野など地方で賭け将棋をする様子も非常に興味が持てた。

小説に出てくる真剣師は現実には今はもういないらしい。

解説を書いた羽生さんが一度だけ子供の頃真剣師と将棋を指したエピソードを語っており、

本編ではないのだが、それも実に面白かった。