『起業の天才』大西康之著

リクルートの創業者、江副浩正の半生を綴った本。

大阪で生まれ、貧しい中親戚に育てられ、東大に入り、そこで大学新聞の広告部門を

担当する会社を立ち上げ、それがやがてリクルートになるわけである。

江副は大学で心理学を学び、日本的経営がいずれは続かなくなると言う意識を持っていた。

そこで、「従業員皆経営者」意識を持った会社を作り、生まれたばかりの企業であるにも

関わらず、どんどん東大卒を採用し、コンピューターも最先端のものを導入することで、

優秀な理系の学生も採用することを試みるのである。

江副自身は自分のことを優秀ではないと思っていて、従業員には自分より優秀な人材を

採用することにしていた。アメリカの鉄鋼王アンドリュー・カーネギー

「自分より優れたものに働いてもらう方法を知る男ここに眠る」と自らの墓に

墓碑銘を刻んでいる。これを江副も意識していたようである。

確かにリクルートには優秀な人材が集まっていた。

リクルート出身の起業家は今も多いし、そう言う精神を持った優秀な人材を

特に集めていたのだろう。

しかし、江副はやがて「既得権益側」に回るようになり、

政治家や有力実業家などとつながりを持つようになる。

そして、政治家やNTT社長に贈賄や公開前の株式を買ってもらうなどして

恩を売ろうとしていた。

それが問題となり逮捕されたのが、いわゆるリクルート事件である。

これを機に江副はリクルートから離れることになる。