『じんかん』今村翔吾著
私は歴史小説が好きなのかもしれない。
この小説も戦国時代が舞台の歴史小説。
主人公は松永久秀。主家を殺し、天下の将軍を殺し、東大寺の大仏殿を焼き尽くすという
三つの大悪を働いた男として信長に言われた男の一生を描いた物語。
出自が不明と言われているが、この小説の中では
遺児として追い剥ぎをしていた所から話が始まる。
ある兵法者を追い剥ぎしようとして逆に追い込められ、
弟と仲間と運よく逃げた寺で平和に暮らすが、
追い剥ぎ時代の仲間である多聞丸という男が語っていた
大名になるという夢を自分も追い求めて
寺に出資しているある人物に会おうとして、弟と共に出かけることにする。
そこで堺の商人武野新五郎、さらには三好元長という有力者の元に使えることになる。
途中、柳生家で後の部下となる瓦林総次郎や海老名権六、四手井源八らと出会い、
仲間となって、徐々に地位を上げていく。
しかし、戦国の世を生き抜く九兵衛(久秀)は元長に影響されて、
民により世の中を治め、この世から武士を無くす、というのが自分の夢だと思うようになる。
やがて、三好家の重臣となり、お家騒動などに巻き込まれていく。
なぜ東大寺を焼き討ちしたかについてはもっと描いても良かったのではと思う。
それでも若かりし頃の久秀と従来描かれていた悪党である久秀像を違う角度から
描いている点で新しいと言えるのかもしれない。