『現代語訳 論語と算盤』渋沢栄一著

日本資本主義の父と呼ばれ、明治期に約470社もの企業の

創立、発展に貢献した実業家の渋沢栄一の講演などを

文章にまとめた本。

渋沢は資本主義の発展には論語が必要だと考えていたようです。

論語と言えば、

「吾、十五にして学に志す

三十にして立つ

四十にして惑わず

五十にして天命を知る」

という言葉が有名ですが、

ただ道徳的な考え方を述べただけではなく、

その考え方は経済的な活動にも必要なものだと渋沢は話しています。

「豊かになりたい」という思いを持つのは当然だとして、

その思いの前提として社会の基本的な道徳を持って物事を推し進めて欲しい

と述べています。

競争についても道徳が必要であり、それは良い工夫をして知恵と勉強で他人に

打ち克つことの方が、他人の成果を横合いから奪い取ろうとすることよりも良い、

と考えています。

 

また、道徳のみならず、世の中の原理のようなものについても考えを述べています。

国家が健全な発展を遂げていくためにはあらゆる分野において常に外国との

競争が必要だと考えています。これは個人についても言えることであると思います。

競争をすることで自分を磨くことになりますし、その意識が自分を豊かに

してくれると思うからです。

もちろん競争だけではなくて、自分が組織の一歯車として働いている時に

つまらない仕事だと片付けてしまうのではなく、千里の道も一歩から

とあるように目の前の仕事をコツコツと積み上げていくことも重要だと

渋沢は言っています。

また、渋沢は人には誰でも「これだけは譲れない」というものを持っていて欲しいと

考えています。そうでないと人の一生は全く生き甲斐のないものになってしまう、と。

自分には果たしてそのようなものがあるだろうか。

振り返ってみるとそのようなこだわりを持っていたのは

学生時代くらいだけだったかもしれません。

大学時代は社会学や読書については誰よりも努めていたという自負がありましたし、

社会学的な概念の思考法については知識を詰め込んでいたことに

自信を持っていました。

しかし、社会人となってみるとそう言ったこだわりを仕事の面でも

プライベートの面でも持ってはこなかったような気がします。

遅いということはない。

自分のこれからの人生にこだわりを持ってこれだけは譲れないというものを

持って生きていきたいと強く思いました。