『想像ラジオ』いとうせいこう著
東日本大震災で亡くなった方が、まだあの世に行ききれずに
この世とあの世の間をフワフワしているような魂魄の状態の時に
その方が想像力を電波がわりにしてラジオを発信する物語。
ラジオを聴けるのは魂魄になった人だけということで、
現世に対する思いなどをリスナー含めて語っていくのだけど、
決して生者と死者の間に確たる境があるとは言っていない。
両者は持ちつ持たれつの関係にあると言っている。
「生きている僕は亡くなった君のことをしじゅう思いながら人生を送っていくし、
亡くなっている君は生きている僕からの呼びかけをもとに存在して、
僕を通して考える。」
亡くなった人に思いを寄せることの深さを感じます。
「死者と共にこの国を作り直していくしかないのに、まるで何もなかったように
事態にフタをしていく僕らはなんなんだ。」