『罪の声』

2020年公開のサスペンス映画。

グリコ・森永事件をモデルにしている。

事件で身代金の置き場などの指示に使われた電話の音声は3人の子供の声。

事件から30年以上が過ぎた現在、新聞社が再びこの事件を追い始め、

同時に声を利用された人が大人になって偶然自分の声が事件に利用されたことを知り、

事件の真相を追い始めるところから話は始まる。

物語についてはここでは触れず、あえて新聞記者の姿勢について書いておきたい。

主人公は、新聞記者として事件の真相を追う一方で、

それが読者にはエンタメとして消費されるだけではないのかという葛藤があった。

エンタメにならないようにするために主人公は事件の真相を追いながら、

被害者(声の主)に寄り添う選択をする。

事件記者の辛いところは事件を追って真相を明らかにしたいという思いがある一方で、

追えば追うほど被害者に辛い過去を掘り起こすことになるのではないか、

という葛藤があることだ。

この葛藤は記者自身が事件の真相を明らかにすることで、再び同じような事件を

起こさせないような提案を読者に投げかけること、そして読者自身に事件について

想いを馳せてもらえるような記事を書くことに尽きるのではないか。

記事を書くことが記者の仕事なのでそれ以上もそれ以下も求める事はしないわけだが、

被害者に寄り添うことは事件を追ってきた者としての自身の贖罪の気持ちを込めての

行為でもあるかもしれない。